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ピエゾピックアップ自作

アコースティックギター用のピエゾピックアップを作ります。

この丸いものが圧電素子といわれるもので、デスクトップPCの中などビープ音を発する身近な家電の中に入っていたりするものです。

中心の白い部分がセラミックで出来ていて、圧力が加わると電圧が発生する特徴があり
この素子にちょろっと配線するだけで割と簡単にピエゾピックアップを作ることが出来ます。

自作する場合は電子部品屋さんで探すか、何かしらを分解して調達する事になるのですが、
素子が丸型の場合、低音の集音能力が直径(恐らく面積?)と比例するようなので、必ず3cm程度の物を探した方がよいかと思います。 今回入手したものは直径27mmですが、これ以上低音多くても困るしこれでちょうどいいなと感じました。

今回作るのは”貼りピエゾ”と呼ばれるタイプになるのですが、
ブリッジ下に仕込むインブリッジタイプに対して、貼りピエゾの方が自然な音が手軽に得られる特徴があるかと思います。 今回の工作を通して、貼りタイプのメリット、デメリット共に色々と気づく点があったのですが。
貼りタイプの場合作った方が高性能なものが入手できるのは間違い無いかと思います。





今回ピエゾを作って取り付ける Furch G23-SRCT です。

チェコ製のギターでトップがスプルース、サイド&バックがインドローズ、マホガニーネック、エボニー指板のオール単板です。

特別高級な木が使われてる訳では無いですが、丁寧な作りでかなり気に入っています。 音の傾向としてはLakewood辺りに近いと思いますがFurchはローミッドがちょっと癖がある感じに濃ゆいです。

トップがシダーのモデルもありますが、スプルースの方が手加減なしにハイがバリバリ出る感じで好みです。

ブレーシングの位置をマスキングテープで目場ってあります。




携帯のカメラをサウンドホールに突っこんで一生懸命ブレーシングの位置を調べました。 ネオジウム磁石とか使って正確な位置を特定できればよかったんですが、手定規でなんとかしました。

奥に見えてるのがエンドピンジャックなんですが、
Furchのギターはエンドピン穴が元から12mmで空けてくれているので エンドピンジャックの取り付けに際して穴径の拡張をする手間が省けます。

いい木材が使われてるギターにガリガリドリルで穴を開けるのは精神的負担が大きいので有り難いです(笑)




Switchcraft社製エンドピンジャックです。

だいぶ前に買った物なので記憶が怪しいのですが、3極のステレオタイプでニッケルメッキのものなので これ だったと思います。

パーツとして購入できるエンドピンジャックのなかでは定番では無いかと思います。 このエンドピンジャックがこの工作で一番お金が掛かるパーツだったりするんですが、今は安くて評価の高い ALLPARTS JAPAN SUPER ENDPIN JACK NI というのがあるので、ご自分で工作してみようと思う方にはこっちをお勧めします。差額でピエゾのパーツが全部買えちゃいます。




今回の配線にはMOGAMIの2944を使います。機材内部配線用の線材で、大体3mm弱ぐらいの細さでありながらシールド線です。

初めて使う線なので周波数特性的にどんなもんかはよく分かりません。 結果的に図太い音も拾えたのでふとスペアナを見ると60hzとかもしっかり出てるようでした。

如何せん細く皮膜も薄いので過酷な使用環境に使うべきではなさそうに思いますが、 固定機材の配線ぐらいならこなしてくれそうな気もします。しなやかで取り回しも良いです。




mogami 2944 の皮膜を剥いてみるとこうなっております。2芯+皮膜の無い芯線がもう1本、 このもう1本は芯線を囲むシールドと接触しているのでグランド線として使ってねという事だと思います。

音の観点からはグランド用に芯線と同じ線があるべきというのはよく聞いてましたが、 実際にこういう構造をとっているのははじめて見ました。ワイルドな作りだ。




switchcraftのエンドピンジャックに3.5スケアのステレオミニプラグジャックを結線します。
ステレオジャックのパーツにはマル信無線の MJ-074N を採用しました。

軽量化を念頭においてありものから良さそうなのを選出したんですが、 使ってみて非常に丁寧な作りで信頼がおけると思いました。

しかしこの MJ-074N 短い方の極2つに 1・2 と番号が振ってあったので、珍しいなと思いつつ素直に1番グランド、2番ホットで結線するも、この表記が嘘でした(笑) 普通に長い極がグランド、短極・金色がスリーブ、短極・銀色がホットと思われます。ニッケルメッキがホットというのが個人的にいいと思います。 うろ覚えなので使われる方は現物を確認して下さい。

その後、色々な工作でマル信無線さんのジャック類のお世話になるようになったのですが、完全にファンになりました。 不要な味付けの無い音でプラグの食付きも良く、正に安心の日本製。




出来ました、エンドピンジャック側はこれで完成です。
なおこの写真ではステレオジャック側の配線が誤った状態で結線されております。修正後の写真が無かったので悪しからずです。

取り付け後はギター内部でマル信のステレオジャックがぷらーんと浮いている状態を想定しています。 空中に浮いてれば壁にコツコツあたったり、ビビッてノイズ源になることも無かろうと言う発想ですが、もっと短く作っても良かったかもです。 失敗する可能性を織り込んでついつい長く作ってしまうという
取り付けに際してミニジャックは12mmのエンドピン穴をくぐってくれないといけないので、入力を増やしたくなったら長さが互い違いになるようにミニジャックを増設するという構造を想定しています。




ピエゾ素子からのアウトプットになるステレオミニプラグを作ります。

プラグには REAN NYS231BG を採用しました。
このREANと言うのはNEUTRIKが中国に作った工場で生産されているものらしく、概ね安価版のブランドと思って良いみたいです。
今回これを採用した理由は本家ノイトリックのミニプラグがL型のものしか見当たらなかったのと
プラグの軽量化を図りたいというのがありました。

欲を言えばニッケルメッキが良かったって点と、かっこいいので黒カバーにしてみたけど裏側もしっかり黒くてグランドが通電しているのか不安。
因みにステレオである必要は全く無いです。モノラルミニプラグで大丈夫です。




さて、いよいよ本体の圧電素子です。

MOGAMI 2944のホットとコールド+グランドをピエゾ素子に配線するわけなんですが、 果たしてセラミックと金属板のどちらをホットにすべきなのかが結局よく分かりません。

今回はセラミック側をホットにして結線しました。良く見かける作例では逆の場合が多いです。 どっちでもいいかもしれないですが、逆にすれば位相が逆になるんじゃないかと思います。
あとコールド側はシールドとまとめて結線するのが普通かと思いますが、今回作ったものでは、 マイクプリに突っこんで位相反転した際に結構音が違う気がします。
それがシールド線の影響なのか、ホットが金属かセラミックかで音が違うのか、特定するとこまでは追い込んでいないのでなんとも言えないです。




これで半田付け等の電子工作は完了です。

プラグとかを除けば圧電素子に配線が結線されただけのシンプル極まりない構造ですが、
ピエゾピックアップシステムの完成です。

これで音が録れるのが不思議でなりませんが、27mmの圧電素子を用いたこのピエゾピックアップで、 エレキギターのハムバッカーピックアップの半分弱ぐらいの出力を得られました。
尚、取り付けを失敗して中途半端な接着だと、本体がビビッてしまうのか良く分からないローファイ音で脅威的な音圧が得られます(笑)




ピックアップの接着には プリット ひっつき虫 を使います。
これを最初に見つけた方が何方かは存じませんが、素晴らしいです。

触った感触は固まる前の紙粘土みたいな感じなのですが、粘着力があって伸ばすと細く長く伸び、良く見ると繊維状に糸を引いています。 確実に接着でき、何度でも剥がせるので、ほぼ無制限にやり直しが効きます。

素材は合成ゴムとの表記があり、音色的に不利なんじゃないかと懸念していたのですが、確実に接着でき、分厚くしても殆ど音質への影響を感じませんでした。 とにかくしっかりと接着されているという事が重要なようです。剥がす際はゆっくり力を加えて下さいとの注意書きがあります。

剥がした際、接着面に残ってしまった接着剤も 指で擦るとまとまるタイプの消しゴムの消しカスの要領で非常に綺麗に除去できます。 試しにむき出しの木材の表面としてSPF材で試してみたのですが、指で擦るだけで完全に綺麗に除去できました。 但し、ギター内部に使う際は目で見て位置を確認できない為、触った感触だけで完全に綺麗にするのは困難ではあります。 それ以外は完璧、ピエゾの取り付けのために開発されたんじゃないかと思える様な素材です。




テストサンプルの録音

ピックアップの取り付けに辺り、ボディットップ表面より計52箇所から徹底的にサンプルを録りました。

録ったはいいものの、流石に結構なサイズになってしまい、全てのファイルをここに並べる訳にも行かないので、 ここでは掻い摘んでの紹介とさせてもらい、全てのファイルをチェックしたい方には、 ストレージに置いておくので其方からファイルを落としてもらう感じにしてみようかと思います。

全ファイル : GoogleDrive

取り付け位置を決める上で抑えておきたいポイントとしては、

ブリッジに近い方が周波数特性は良いがピエゾ特有の響きがきつくなります。周波数的には41番が一番いいと思いますがどうしようもなくピエゾです。 これは、そもそもブリッジ弦からボディに入力されている金属弦の音はこういう音と言うことでは無いかと思います。 周波数云々と言うよりはアタックのトランジエントとかがおかしいんですよね。

30番、35番の辺りも良く採用される事が多いかと思いますが、ブレーシングに近いとどうしても不自然なピークというか歪な響きが多くなる気がします。 かといって広い面のど真ん中である9番がすごくいいかと言うとそうでもない




完成

いざボディ裏面に貼り付けたら完成です。
最終的に6番の近くで微調整した位置に決めました。

Rode NT2A : Rode NT2A
6番の音 : P6

実際にボディ裏に貼り付ける際は、目で見て確認すると言うことが出来ないので、表と同じ音にするのは非常に困難でした。 毎回弦を外して張っての繰り返しも必要なので、現在は多少妥協した位置で我慢してたりします。

使ってみて気づいたのですが、このタイプのピエゾはとかくモニターなどからの返しの影響をもろに受けます。 ハウリングを起こしやすいとか言うだけでなく、ヘッドフォンで作業しないと位相の干渉を受けてアウトプットされる音色も変わってしまいます。 安定した音色で出力出来ないというのはやはりデメリットだと思うので、 メーカーが余りこのタイプをフラッグシップとして作りたがらないのもこの点を憂慮しているからでは無いかと思いました。

とはいえ、音色の自然さはインブリッジタイプの非ではないと思いますし、 一々マイクを立てずとも、シールド刺せば音が録れると言うのはやはり便利だと思います。
エンドピンプラグを除けばピックアップ自体は数百円程度で作れてしまうので、興味ある方は是非チャレンジされてみてはいかがでしょうか。








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